AHA! Project

展覧会

2017/09/09-10/15 conservation piece/peace コンサベーション_ピース ここからむこうへ part B はな子のいる風景

[武蔵野市立武蔵野市吉祥寺美術館ウェブサイトより転載] 忘れられ消えつつある他者あるいは自己の記憶。それらはできるかぎり保存(conservation)されるべきなのだろうか。失われた/残された記憶を保存するとは、それらとどのような関わりを築くことなのだろうか。
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この問いを前に、本展では、拾った断片を用いて制作を行うアーティスト・青野文昭の作品・態度と、個人的・私的に残された記録物に着目するアーカイブプロジェクト・AHA![Archive for Human Activities/人類の営みのためのアーカイブ]の取り組みに注目する。
かけらと対峙し、その「本来のかたち」をさぐる作業の中で、時空を越えて存在した異なるものともの、人と人との関係性を照らし出す青野と、様々な地点に離ればなれに残された記録のかけらの再編集を通し、存在と非存在との境目の問い直しを図るAHA!。
欠落や不在への2者のアプローチを通して、記録のかけ/かけら(piece)を起点に、自己から他者へ、現在から過去へ、ここからむこうへ、そしてまた、むこうからここへと境界を越え、消えゆく記憶を蘇生し、受け渡すということの意味を再考する。
戦争や震災の記録のかけらを介し、それらの記憶に触れることを通じて、私たちはまた、自分たち自身が抱く平和(peace)のかたちを見直すことともなる。

※本展は、記録と記憶のあり方をテーマとした2015年度企画展「カンバセーション_ピース conversation piece/peace:かたちを(た)もたない記録 小西紀行+AHA!」からの連続企画である。

開催期間:2017年9月9日(土)~10月15日(日)10:00-19:30
(休館日: 9月27日(水))
入館料:一般300円・中高生100円 (小学生以下・65歳以上・障がい者の方は無料)

※『はな子のいる風景』読書スペース(当館ロビー)は入場無料

戦後、最も早く来日したゾウ。そして、日本で最も長く生きたゾウ。〈はな子〉―。
そのゾウは、1949年、「平和の象徴」としてタイから贈られ、1954年からは井の頭自然文化園で暮らし、2016年5月、69歳(推定年齢)で生涯を閉じた。
市井の人びとの記録を対象にしたアーカイブプロジェクトを展開するAHA![Archive for Human Activities/人類の営みのためのアーカイブ]は、2015年度に武蔵野市内における8ミリフィルム収集を実施した際、異なる家庭に残された映像記録の中に、いくつもの〈はな子〉を発見する。多くの人に知られ、親しまれた〈はな子〉が、全く関係を持たないと思われた様々な人同士をつなぎ合わせる結節点となることに着目したAHA!は、本展に向け、井の頭自然文化園協力のもと、各地に散在・潜在する膨大な〈はな子〉との記念写真の収集を実行し、記録集『はな子のいる風景』を製作した。
本記録集は、集まった写真と〈はな子〉の飼育日誌、写真以外の私的/公的記録(日記、アルバムに記されたメモ、新聞記事など)、写真提供者へのインタビューなど、いわば、誰かが残した記録の断片の集積によって構成される。AHA!は、ここに異なる読み手・・・の記憶や想像がここに加わることにより、それらの断片が繰り返し組み立て直され、記録の意味内容が常に更新されていくことを意図している。
様々な人びとの記録が偶然に巡りあい重ね合わされる中で、失われたはずの記憶が表面化する瞬間、「在る」ことと「無い」ことの境界が揺らぎ始める。
青野文昭展会場ロビーに本記録集の読書スペースを設けるとともに、井の頭自然文化園ゾウ舎前モニターにおいて、収録写真(一部)のスライド上映を行う。

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[記録集] はな子のいる風景 イメージを(ひっ)くりかえす
     : I'm calling you. rebirth (reverse) of humans and the elephant.

       69年間の169秒、
        と、その残像。        

          戦後の日本に最もはやくやって来て
          戦後の日本で最もながく生きた、
          "はな子"という象がいました。

          本書は、市民が撮影した169枚の写真と
          撮影当日に記された飼育日誌をつなぎ合わせて、
          彼女の歩んだ道のりの
          一瞬一瞬、1日1日に光をあてたものです。

          本書はまた、はな子の死によって
          呼び寄せられた人々の、
          失われたものを思い出す
          幾多の物語でもあります。

          写真と言葉を(ひっ)くりかえす。
          人と象を(ひっ)くりかえす。
          私たちとはな子を隔てる溝を(か)たどる時、
          そこに(逆)再生される瞬き、はな子のいる風景。
                              (本書概要より) 
                                
・W220×H188mm/192頁(+貼込+差込+小冊子等)/モノクロ(カラー)/本体価格2,000円
・9月上旬、吉祥寺美術館ミュージアムショップにて販売開始予定
・THE TOKYO ART BOOK FAIR 2017(10月5日~8日)出展

 [企画] AHA! [Archive for Human Activities/人類の営みのためのアーカイブ]
 [取材・編集・執筆・構成] 松本篤(AHA!)
 [デザイン・構成] 尾中俊介(Calamari Inc.)
 [取材・編集補佐] 大内曜(武蔵野市立吉祥寺美術館)
 [寄稿] 保坂和志
 [協力] 公益財団法人東京動物園協会 井の頭自然文化園
 [印刷・製本] 大村印刷株式会社
 [貼込・差込] 社会福祉法人武蔵野 ワークセンターけやき
 [発行] 武蔵野市立吉祥寺美術館
 ISBN978-4-9909772-0-7

[関連イベント1] 写真展「はな子のいる風景」
主催:武蔵野市立吉祥寺美術館
会期:2017年8月21日(月)~10月15日(日)
会場:JR吉祥寺駅南北自由通路(はなこみち)ポスターケース
・記録集『はな子のいる風景』収録写真の一部を展示します。

[関連イベント2] 写真展「はな子のいる風景」
主催:井の頭自然文化園
会期:2017年9月9日(土)~10月15日(日)(予定)
会場:井の頭自然文化園 彫刻館
・当館+井の頭自然文化園共催プロジェクト「はな子の記録と記憶を集める」応募写真の一部を展示します。
REMO DESK 2017年9月 3日